「頑張れ」から「もういいよ」


その後、3日ほど調子が良いというか平行線でした。
生きているのが信じられないくらいです。

もしかしてまた乗り越える?

でも体中の内出血・アザもどんどんひどくなりますし、21日に病院へ来ましたが心臓も肺もすべて悪化しています。
腹水も貯まりはじめました。
頑張っているけど前回のような回復の兆しは見られず、やっぱり前回とは違う・・・今までとは違う・・・

それに、全身のアザを見ると悩みます。 
どこまですべきか・・・

この日から私の心が少し変わったのに自分で気が付きました。
「もう・・・限界だ・・・」

アザも可愛そうで、1日3回も私にされていた血栓の注射のお薬はやめることにしました。
改善もなく悪化しており、お薬の効果も見られませんから。
点滴もやめます。腹水がたまりはじめ、もう身体がオーバーワークです。

しーちゃんからのサインにも見えました。
「お父ちゃん、もういいよ・・」

ところが、私がそう思ったからか・・・

翌22日の晩、私の晩御飯のステーキ(安物です)をけっこう食べました。
2週間も全く自ら食べることはなかったので、食べるはずがないと思いつつ、何気に与えたら食べます。
慌ててドッグフードを混ぜても食べます。

「お父ちゃん、美味しいわあ~」「ありがとう。」「大丈夫やで!」

なぜ急に喜んで食べたのか・・・
最後に美味しいもの食べたかったのか・・・・
注射や点滴をやめたこと、あるいはそれに至る私の心の変化を感じて、何らかの影響があったのでしょうか・・・

すごいなシーちゃん!美味しかったんや。良かったなあ。


翌朝23日起きると、また呼吸が苦しそうです。
朝から病院です。

心臓の両方の弁の逆流がさらに悪化しています。
肺高血圧症もすごく悪化。
もうかなり悪いです。 先生も教科書でも見たことない状態です。
点滴もやめているのに腹水も増えてます。

すべてかなり悪いですが、心臓や肺、血液、血圧がもう奇跡的なバランスでなんと生きている状態で、 なにもできないんです。
肺高血圧症のお薬や、肺や心臓の為に利尿剤を飲ませたりすると、血圧が下がりすぎて危険で、どうなるか解りません。

肺高血圧のお薬は怖くて、でも腹水も気になるので利尿剤だけもらって、極微量飲ませました。
 


お別れ


夕方になると、さらに悪化しています。
おそらく、肺水腫など少し違う肺の問題が起きたのか、また違う呼吸困難です。

朝も行ったけど、もう一度病院へ行くか・・・
入院して頑張ったら、何とかなるかも知れない・・・
でももう十分頑張ったし、今回は今までと違うし・・・
例えまた頑張って乗り越えても、すぐにまた「次」が来る・・・
すごく悩みました。

賛否もあれば、芸能人のSNSなら「病院へ行くべきだったろ!」って炎上するかもしれません。
あるいは「飼い主のエゴだ、もっと早く安楽死にするべき!」と言う意見もあると思います。

でも、主治医は飼い主さん、命の委任状は飼い主さんが持っています。
皆さんもいつかこういう決断をしなくてはいけません。
私自身も、これ以外にも「あれがダメだったのでは?」とか「あ~すれば良かったのでは」など、自問自答や自責の念も山ほどあり苦しいしつらいです。
でも、あえてお話します。

「しーちゃん、どうする?」
「もう一回病院行ってみるか?」
「もう嫌かあ?」
「お家で頑張るか・・・・?」

 
変わり始めていた自分に気が付いていましたが、とうとう本当に覚悟を決めてしまいます。

注射は4か月間も毎日で、元気な時は「注射の時間やで」って言えば、痛いの解っているのに背中を持ってくる。
ここ2週間は1日3回のお薬の注射に、1日2~3回の太い針で皮下点滴 。
それでもずっと全然嫌がらない「おりこうさん」
しかもこの子はあきらめない。絶対に生きることをあきらめない。 

私が「頑張れ!」って言えば、絶対に頑張る。

10年でいったい何回入院した? いったい何回死ぬほど苦しく朝まで眠れないのに頑張った?・・・頑張らせた?

全身のアザ・内出血、ガリガリに痩せて骨と皮だけ、それでも必死で次の呼吸をする。

「しーちゃん、ホンマに今まで頑張ったなあ。」
「しーちゃんはすごいなあ。えらいなあ。」
「また絶対に一緒に暮らせるし、頑張ったから次は絶対に苦しくないよ。」
「また一緒にお散歩してキャンプして、いらっしゃいませもできるよ。」

「もう十分、十分…十分頑張った」


「もういいよ・・・」



初めてこんか言葉をかけてしまいました・・・。


夜になると、呼吸困難と意識が朦朧とするのを繰り返すような感じです。

ずっと一緒にいました。

でも深夜には、しーちゃんも酸素室の中で眠れました。
極端に言うと、2週間以上毎日こんな感じですから、私もウトウト・・・

ちょうど深夜3時頃です。

何かゴソゴソして様子の変化に気が付いて目が覚めました。

「ワン!」って突然吠えて私を呼びました。

信じられないことに座っていました。
吠えたのも・・・え?しーちゃん声出したよね?今?という感じです。

そばへ行くと、寄り添ってこようとします。
呼吸が相当苦しいようでした。

「父ちゃん・・・苦しい・・・苦しいよ・・・怖いよ・・・助けて・・・助けてよ・・・」

よく、最後は自分で解って挨拶をしてくれる・・・なんて言います。
こんなこと言うとダメかもしれませんが、そう思った方が飼い主さんも楽です。

でも正直なところ、この時は苦しくて怖くてつらくて、どうにか助けて欲しくて、私を起こしたように思います。

それだけではなく、しーちゃんの目的は、最後のお礼や挨拶もあったのでしょうか・・・

いずれにしても最後の力を振り絞って、座って吠えて私を起こして呼びました。

「大丈夫、大丈夫、大丈夫やでぇ・・・。」
「頑張ってるな、えらいな、カッコえーな、すごいな・・・」
「怖いなあ、苦しいなあ、でも大丈夫」
「大丈夫、大丈夫やで・・・」


そう声をかけると、私の顔をしばらく、じ~っと見つめます。
2回ほど「うん」って返事をしたように感じました。

苦しいし、意識も朦朧としているようですが、少し甘えているように見えます。
何とも言えない・・・苦しいながらも、今まで一番情けない寂しい悲しい顔をします。

こんな寂しい顔見たことない・・・。

顔を近づけて
「そうやで。頑張ったんやで。大丈夫やで。おりこうさんやなあ。」

すると少しだけ笑って・・・2回ペロッとキスをしてくれました。

そしてす~っと意識を失いました。
意識はないまま、私の腕の中で15分くらいは呼吸をしていました。

やがて呼吸の間隔が空いていき、そして止まりました。

最後は、「疲れたあ~」ってため息のような、何かを成し遂げた安心感みたいな達成感みたなものも感じました。


呼吸が止まっても、「ドックン・・・ドックン・・・ドックン・・・」
心臓だけはしばらく鼓動を打っています。

「ドックン・・・ドックン・・・・・ドックン・・・・・・・・ドックン・・・・・・・・・・・・」

一回一回の心臓の鼓動がとても力強く、私の全身、頭まで響きます。
自分の鼓動なのかしーちゃんの鼓動なのか解らなくなり、一体化したようにも、私の中に入ってきたかのようにも感じました。
しばらくの間、鼓動だけが鳴り響く真っ暗でどこか別の世界にいるようでした。

私を鼓舞するような力強い鼓動は、とてもたくさんのメッセージを感じました。
言葉にはできません。私にしか解りません。


最後の1回まで力強くとても暖かかったです。

それと、不思議なことに気が付きました。
どういうことか解りませんが、あれだけひどくなっていた心臓の雑音が無くなっていました。


ありがとう。

本当に頑張ったな。
やっと苦しくなくなったな。

最後治ってたやん・・・すごいやん。
これで元気に走り回れるな。大好きな琵琶湖で走れるな。

もっと生きたかったな。もっと一緒にいたかったな。
大丈夫、また会えるよ・・・

お父ちゃんとこ来てくれて、ほんまにありがとうな・・・。







2019年7月24日午前3時半頃に亡くなりました。

お店の美容室のご予約の都合があって、26日(金)に実店舗はお休みを頂いて、火葬してきました。
私はいつも和歌山の「アニマルレストガーデン」さんにお世話になっています。

涙が枯れるほど泣いてしまいました。

亡くなった時は、「やり遂げた感」や「しーちゃんも楽になれた」と言う気持ちがあったのですが、
数日経ち、火葬して身体が無くなってしまうと、とんでもない喪失感に襲われました・・・

自宅へ帰ってきて、なんとか気分を晴らそうと、空を見上げるとこの景色です!



しーちゃん・・・しーちゃん・・・しーちゃん・・・(号泣)
ありがとう・・・

しーちゃん、やるなあ~すごいなあ~
こんなことある?
しーちゃん、こんなことできるんや・・・。

全身鳥肌がたって、何とも言えない暖かい気持ちと、これからお別れと向き合っていく勇気と・・・
言葉にできるようなものではありません。

やっぱり・・・
しーちゃん神の子、不思議な子・・・。


本当に見たことがない素晴らしい立派な虹だったので、スマホのパノラマモードに挑戦しましたが・・・失敗。
とにかく誰もが声をあげるほど素晴らしい虹でした!