大きな黒い壁・・・
翌日、さらに悪化してきます。
やっぱり違う・・・「このまま頑張りましょう」ではない。
このままではダメだ・・・
ごめん、しーちゃん、どうしようか・・・
頭下げてC病院へ行くのも、しーちゃんの為ならできるけど、うまく伝えられるかな・・・また「いつも通り」「この子ならこんなもん」になるんじゃないかな・・・。
悩みましたが、今お薬もらっているD病院の先生を訪ねました。
やっぱり見立ては同じです。
もう一度心臓病の定番である肺水腫から疑っていきますが、原因は解りませんでした。
でもこの先生は、私の「いつもと違う」をすごく聞いて下さいました。
あれやこれや・・・可能性のあることをたくさん考えて下さいました。
心臓の専門医が3月19日、ここへ来たのが翌日20日。
さらに翌日21日に、「肺血栓では?」と説明して下さいました。
前日たくさん疑った中から一晩考えて下さったそうです。
血液中のDダイマーと言う検査をし、 「肺血栓塞栓症」だと言うことが解りました。
今までの先生でも通っていればもっと早かったかも知れないですが、おそらく「いつも通り」で私の「何か違う」は伝わらず、さらに数日遅かった、もしくは最後まで解らなかったと思います。
もちろん、私が未熟でダメ飼い主ダメ人間になって先生とうまく行かなくなったのも含めて。
この先生が新鮮でいろんな角度から見て下さったからだと思って感謝しています。
偶然か必然か運命か・・・しーちゃんが導いてくれたのか・・・神様か・・・これでも最短だったかもしれません。
1~2日遅いとこの時がお別れだったと思います。
半日入院までしていろいろ調べて下さった心臓の専門の先生には、見つけたり、せめて血栓を疑って欲しかったのは正直なところです。
たった1日違いですしね。
また生意気で嫌味のようですが「ペースメーカー等手術の心臓の専門医」と、こうした場合とちょっと違うのでしょうか・・・。
それとも私の態度がそんなに悪かったり関わりたくなかったのでしょうか・・。
血栓って血液の塊です。
人間でも心筋梗塞や脳梗塞、肺などどこで詰まるかによりますが、すごく大きな問題です。
正体はこれか・・・私達は黒い大きな壁に押しつぶされそうになっていきました。
すぐに治療を始めましたが・・・
見る見る弱ってほぼ寝たきりで、トイレも自分でいけない状態になっていました。
相当危険な状態で1日入院しました。
その間に、自宅とお店に久しぶりに酸素室を設置しました。
今までも何度も「いつ」死んでもおかしくない状態は経験しましたが、「今」死んでもおかしくないくらいになりました。
血栓ですが、犬猫の場合「ほとんど助からない」と言っても良いのではないでしょうか・・・。
しかもこの子は心臓の問題もあって・・・ようは手の打ちようがありません。
この状態は「安楽死」が普通かもしれません。
特に肺なので苦しみますしね。
そういや・・・この子との10年ほどの間、「突然死」や「安楽死」は常に隣合わせです。
でも、この子はいったい何回それを乗り越えたか・・・
逆に言うと、いったい何回死ぬほど苦しい思いをしたのか・・・
普通の飼い主さんだと、たぶん見てられないと思います。それくらい苦しんでます。
私も決して慣れるようなものではありません。可愛そうで可愛そうでつらいです。
だからずっと「安楽死」も頭にあります。
この子も慣れていると言うのは少し違います。毎回毎回死ぬほど苦しいはずです。
ただ、苦しいのには慣れないですが、また治るのに慣れています。
やっぱり信じていてあきらめないです。
「また治る!」「頑張る!」「またお散歩する!」「みんなでお出かけする!私も行く!」
基本的には治療と言うより、予防的に血液をサラサラにするお薬、これ以上詰まらないようにすると言う選択しかありません。
あとは本人の力・・・
まだ失いたくない、まだ一緒にいたい、お別れなんて嫌だ・・・
頑張れ!しーちゃん!またみんなでどっか遊びに行くんやろ!しーちゃんも一緒に行くんやろ!
何度も何度も乗り越えましたが、今までで一番の黒くて大きな壁です。
どんどん悪くなり、意識も朦朧とし、もう寝たまま何とか呼吸しているだけのような状態になりました。
生きる!生きる!また散歩するよ!
正直今度はダメだと思いました。
この時、一つ発見と言うか、していたことがあります。
タブン、周りの人から「変人・奇人」に見えたと思います。
天気のいい日は、寝たきりのこの子を、毛布にくるんでお散歩してました。
抱っこして歩いていると、かすかにこの子が動くのを感じます。
んん?歩くのをやめると・・・微妙なこの子の動きも止まります。
んん?どうした?どこか痛いのか?・・・
だらっと横向いて寝たままだったのに、首を起こしたそうにも見えます。
少し姿勢を変えて、脇の下に手を入れた抱っこで歩いた時に気が付きます。
抱っこしたまま私が歩くと、「イチ ニー、イチ ニー」って肩から腕の筋肉が左右交互かすかにリズムを刻んでピクピクしているんです。
この子も抱っこされたまま歩いているんです!
顔を見ると、喜んでいるんです・・・気持ちいいんです。
「まだ生きる!もっと生きる!」「また父ちゃんとお母ちゃん、みんなでお散歩する!」
「そうかあ~偉いなあ~頑張るんやなあ~すごいぞぉ~大丈夫や!大丈夫やぞぅ~」
・・・死にかけの犬を抱っこし、ワンワン号泣しながら散歩するオッサン。
ちょうど桜が咲き始めていたので、近づけてやると苦しくてつらい呼吸の中でも、匂いを嗅いでいます。
「父ちゃん、お花やなあ・・・」
ツクシを拾ってやって見せてやると、匂いを嗅いで、笑っているように感じます。
・・・死にかけの犬を抱っこし、ワンワン号泣しながらツクシを集めるオッサン。
土の匂い、風やその音、川のせせらぎ、太陽の光・暖かさ・・・地球のエネルギー?宇宙のパワー?・・・
全部感じて・・・「生きる!生きる!またみんなで散歩する!お父ちゃん、まだ頑張るよ!」
乗り越えても乗り越えても・・・
血栓のお薬は飲み薬と、毎日の注射です。
自宅で自分で注射です。
自宅に酸素室を設置して連れて帰る時、先生の感覚は「お家で看取る」だったと思います。
意識も朦朧として、何とか必死で「次の呼吸」をしているような状況でしたから。
お薬や注射器を4日分しかくれなかったので、「1週間分下さい」って言うと、微妙なお顔をなされました(笑)
一瞬言葉に詰まって本当に微妙な感じでした(笑)
1週間は自宅とお店で酸素室、投薬と食べないので栄養剤と点滴を少しずつ、点滴も自宅で自分でやります。
病院へ行くのも負担ですから。
1週間後、病院へ私だけ行って、「お薬や注射、もう1週間分下さい」と言うと、先生が驚きと戸惑いのお顔をなされます。
もうダメだと思ってたでしょ・・・先生。
僕らは普通じゃないんだ、この後のペットショップ人生の試練か修行か成長か・・・とにかく頑張るんだ。
トイレもいけない、お水も飲めない、体温は油断するとすぐに35度くらいまで下がります。
室温・体温管理、口からお水・栄養剤、少しずつ点滴、お薬、酸素室・・・
そのたびに、しーちゃんの生きたい意志を感じて号泣するからやっぱり変人の散歩・・・
2週間ほどで、なんと歩くようになってきました。
抱っこしてお散歩へ行って、下ろしてあげると、2~3歩だけ歩いて自分でオシッコができるようになります。
自分で食べられるようにもなってきました。
獣医さんへ連れて行くと、奇跡だ信じられないと褒めて頂けます。
でも、血栓も再発したり別のところで詰まるんです。
数日後、夜中に激痛がしたようで泣き叫びました。
せっかく乗り越えたのに・・・
今度は腕でした。
前足左が動かなくなってしまいました。
すぐに手は冷たくなって、つねっても痛みもなく、感覚はないみたいでした。
獣医さんへ連れて行っても、仕方ないね。難しいね。
また特に治療法はありません。
痛みは無くなりましたが、感覚もなくずっと左手は上げたままです。
また呼吸も苦しくなってきました。
今度こそダメか・・・
私がそう思っても、この子の目は違います。
苦しそうでも左手が動かなくても、自ら酸素室へ入ってこう言います。
「また治る」「またしばらく頑張ったら治るんや!」「治るで父ちゃん!またお散歩行こう!」「いらっしゃいませしよ!」
治療や回復のため、あるいは呼吸が少し楽だと理解し自ら酸素室へ入りますし、逆に私達がお店へ出勤しようとすると、どんなに調子悪くても自分も一緒に行きたがります。
立てなくても首だけ起こして一生懸命・・・
だから私は、自宅とお店両方に酸素室を作って、移動中は携帯酸素です。
この子はどんな状況でも乗り越えて生きようとします。
絶対安静だけではなく、希望や勇気を持たせるようなことやそれを応援したり応えたり、私自身もそういう気持ちを大切にしていました。
今度は詰まった場所や状態もマシだったのか?3日ほで本当に治ってしまいました。
獣医さんも、また不思議なお顔をします。
すごいぞ!しーちゃん!頑張ったなあ!!乗り越えた!!
しーちゃんがこの身体で13年も生きることができたのは、この「プー子」の存在も絶対にあります。
妹のプーに負けたくない・同じようにできるって言う張り合いや気持ちが無かったら、もっと早く亡くなっていたと思います。
多頭飼いだけではなくて、仕事や役割を持つこと、自信や誇りプライド・・・犬や猫の長生きの秘訣がここにもあると思いますよ。
ずっとこんなにくっついていました。
どの写真もプーに方が少し上で、プーがくっついて行ってたんですね。
優しいお姉ちゃんだったので、しーちゃんがいなくなった今、実はプーの元気食欲がなく痩せて来ています・・・。